といっても僕はデザイナーでもコピーライターでもないのですが、それでもイベント全体の制作を請け負っているときには、その仕事の難しさの片鱗に触ることがあります。
(といってもイベント、広くは広告業界の「クリエイティブ」に関してですが)
ちょっと、お気に入りの作品を紹介します。
ギャラリーフェイク (30) (ビッグコミックス)おなじみ、メトロポリンタン美術館の元キュレーターにして贋作専門が労「ギャラリーフェイク」の経営者藤田玲司が活躍する人気漫画。
こちら30巻の第8話に「シルクロードからの土産」という作品があります。
中国は北京に大文明美術館が設立され、その開館パーティにて、日本の国立大手門美術館館長の大道寺は大文明美術館から見事な仏頭をもらう。
大道寺は仏頭を持ち帰り、自分の宝物として保管していたが、ある日地震で仏頭を割ってしまう。大道寺はその修復を藤田に頼むのだが・・・。
藤田は作品の中で
「未来の人類に残すべき美術品は、それを保管する意志と能力を持った人間が相続すべきであり、それは私が選ぶ」
と言っています。
自分が見ているものを美しいと感じ、それを「絶対に美しい」と人に伝えることには相当な「目」とそして「覚悟」がいると思います。
僕はあるイベントで、業界ではとても大きな広告代理店さん、仮に青空広告社としましょう、の看板をしょって仕事をしたことがあります。
そのイベントは、あるメーカーさんのプライベーショーで、総予算は億単位という大規模なもので、僕は展示会全体を担当する役目でした。
展示会の中での今回の目玉は、メーカーさんのメッセージを伝えるバナー(垂れ幕のようなもの)の制作でした。バナーは展示会のメインステージ付近に置かれ、かなり大きなサイズで、しかも枚数も多く、来場者全員が必ず目にするように設置します。
そのデザインはデザイナーさんにお願いをして、2案ほど出してもらいました。しかし、その提案をする大事な打ち合わせの時、代理店サイドの出席者はたまたま僕しかいませんでした。
僕は一通り説明をしました。それからその担当者さん達は、喧々諤々、色々と議論をはじめ、30分近く時間がたった時、どうやらこの人に決定権があるなという人が僕に声をかけました。
「青空広告社さんはどう思いますか?」
その瞬間頭が真っ白になり、全身が震えました。
それでも僕は2つの案のうち、デザイナーが薦めていた案を推し、デザイナーが僕に説明していた通りに説明しました。
青空広告社という看板をしょって、何億という予算が組まれているイベントの目玉のデザインを決める、つまりは今この場でイベントの基本クリエイティブを決めることができるという瞬間に僕は震えていました。
担当者として一番オイシイ瞬間を、本当に怖く感じました。
僕はイベント制作の仕事を始めて4年目でした。
たいした経験もなかったですが、人とのコミュニケーションが苦手ではないというだけで、いろんな仕事をさせてもらっていました。
制作の仕事の面白さも段々わかってきた頃で、しかも元々クリエイティブな仕事に憧れがありましたので、今回の案件もかなり楽しんでやっていました。
仕事をする人間として、それが良くないことはわかっています。しかしその時僕の頭にあったのは、
何億というお金を払って、自分たちの会社を真剣に社会にアピールしたいと思っている人たちと真剣に対峙し、「このデザインが絶対によい」と言えるまで、僕自身がデザインを理解をしているのだろうか?
という思いでした。
結局僕は口だけ野郎だったんだなと思いました。口がうまいのと、人に何かを伝えることができるというのはまったく別物なんだと初めて気づきました。
クリエイティブは思いを表現します。僕の属する広告業界は「他人」の思いを表現します。格好よいとか、流行っているとか、それだけではデザインを世の中に出すことはできません。
そんな当たり前のことがはじめてわかった瞬間でした。
もともとデザインの「センスがない」といわれている位、クリエイティブに疎いというのが問題だったのですが、それでもこの時以来、色々と勉強はしています。
デザイナーさんがあげてきたものとかを見るととても感動しますね。ああ、この人たちはそんな「人の思い」と真剣に対峙できるんだなって。
(そうじゃないものがあがってくるとかなり頭にきちゃいますけど・・・)
その人たちの作品を見ると、これだけのものを表現できたら、きっと楽しんだろうなって思います。
制作屋としてはそんな方々が仕事をしやすいようにがんばっています。
皆さんがんばっていきましょう!







